ペルーでの障がい者スポーツ普及活動に参加して(JICA短期ボランティア事業)

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鹿児島大学医学部保健学科理学療法学専攻 教員 松田 史代

8月17日から9月11日の期間、日本の無償資金協力により建設された首都リマにある日ペルー友好・国立障害者リハビリテーションセンター(INR)で障がい者スポーツ普及支援活動に参加してきました。今回の派遣は、鹿児島大学の理学療法学専攻3年生4名、2年生1名およびに国際医療福祉大学大川キャンパス4年生2名、3年生1名、東京都の理学療法士1名と、学生8名、理学療法士2名の計10名と大所帯での活動でした。昨年も同様の活動を行っており、昨年同行された国際医療福祉大学の教員が参加予定でしたが、まさかの出発24時間前にドクターストップがかかり急遽リーダーの任を受け困惑している中でのペルー入りとなりました。

 

今回の任務の目的は、ペルーでの障がい者スポーツ指導員講習会開催であり、スライドを用いた講義に加え、車椅子バスケットボール・アンプティサッカー・卓球・大縄跳び・ポートボール・レクリエーションスポーツを実際の患者さんに参加してもらっての実技講習を行いました。患者さんの部門も、脊髄損傷部門、切断部門、知的学習障害部門、発達障害部門と多岐に渡り、INRの理学療法士・インターン学生とミーティングを重ね、限られた短い期間を全員で入念な準備を行い本番に臨みました。

 

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各競技にリーダーとなる学生を決め、出発前までに企画書や説明ポスターを準備し、事前の合同合宿も行い万全の態勢で臨みましたが、やはり異国の地…およびに患者さん参加型で直前での変更点や協議内容も多く、日本語⇔英語⇔スペイン語と、時には何語を話しているか混乱しながら、毎晩遅くまで今日の反省点、明日はどうするか等話し合いを重ね、ペルーに居るのにマチュピチュに行けず… ナスカの地上絵も見れず… ホテルと INR との往復生活と、品行方正な生活の賜として講習会は大成功でした。ペルーテレビ局等、マスメディアの取材も受け活動紹介をすることが出来ましたし、INRスタッフとも仲良くなり、一番は参加して頂いた患者さんたちの笑顔、楽しかったとの声をたくさん頂き、最後は全員で撮影大会でした。

 

また、スポーツイベントでのスペイン語での選手宣誓、ダンス披露、各競技(ボッチャやシッティングバレー、スラローム等)の補助を行い、また Federico Villarreal 大学との大学交流会、INR での日本文化紹介等、とても充実した派遣期間を過ごさせて頂きました。イベント終了後の帰国直前の週末に日帰りでIca・ワカチナまで行き砂漠の中でサンドバギー・サンドボードを楽しみ、マチュピチュ…ナスカ…と叫ばなくても帰国できる精神状態になり、全員で日本へ帰国しました(夏から冬へ行き、また夏へ戻ってきてすぐに体調を崩しました)。

 

ペルーは正直、日本ほど医療や社会保障、福祉体制が整っておらず、また環境面でも車椅子バスケを行うのにINRにゴールがない、アンプティサッカーでのロフストランドクラッチの調整が出来ない、縄跳びの紐が普通のロープ等問題もありましたが、スタッフの意欲も高くかつ協力的で、とても助けられ、とても良い関係を築くことが出来、今後も何かしらの形で繋がりをもっていけたらと思っています。

 

実際に帰国後、渉外促進シニアボランティアを通じ、INR が今後どのように障がい者スポーツを普及させていけば良いかの取り組みや、対象疾患で出来る競技やレクリエーションの提案等を現在もさせていただき、実活動期間は3週間でしたが、その後も交流を維持しています。

 

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今回、活動し感じたことは、障がい者スポーツの父と言われる医師ルードヴィッヒ・グットマン卿が残したことば…「It is ability and not disability that counts.」(失われたものを数えるな、残されたものを最大限に活かせ)を日々思って患者さんと接しているだろうか、ということです。
今回参加したことで日本側の問題点も認識することができした。まずは、日本ではペルーのようにリハビリテーションの一環としての障がい者スポーツへの取り組みがまだ確立されていないことが挙げられます。また、学生が主体として参加することで、学生時代に国際経験を行うことで国際的視野を学べ、国際人としての育成、広い知見の獲得できる利点があり、今回の活動を通じ、学生でも責任をもって参加することで自覚が芽生え、問題提起や解決方法、他者への伝達方法等を異国の地で母国語ではない言語で行うことで、より強い自主性責任感が芽生えました。また派遣期間に関しては、夏休み期間で行うことで学業(単位)に対しての心配がなく、追試を派遣期間中で受けられないため、勉学もより頑張る相乗効果もみられました。学生のみの派遣は、リスク面等で問題があるが、時間的にもゆとりのある学生が積極的に参加できることで今後の進路や思考へ必ずプラスの経験となると考えます。今回の活動を通じ、日本側へのメリットもかなり多く、他国の環境を見ることで自国を認識できること、自国の問題点に気づけることもあり、ボランティアは、受ける側よりも行く側のほうがより学ぶことが多く、今後の糧になることを今回学びました。


参加した学生より

私たち鹿児島大学理学療法学専攻の先生1名、学生5名でペルーに JICA の取り組みである短期ボランティア(障がい児・者支援)に行ってきました。約1ヶ月という短い間でしたが、障がい者スポーツについて深く議論したり、両国の文化・大学の交流を行ったり、障がい者スポーツ指導者講習会やスポーツ大会の支援をしたりと毎日が充実していました。このような貴重な体験が出来たことに感謝し、今後このような活動が促進・発展していくために尽力したいとおもっています。